横浜フランス映画祭2024では映画祭唯一の賞「観客賞」を受賞。主演はフランス映画界を牽引するセシル・ドゥ・フランスとヴァンサン・マケーニュ。監督は『セラフィーヌの庭』でフランス映画最高の栄誉であるセザール賞最多7部門受賞の名匠マルタン・プロヴォ。

「幸福の画家」は幸せだったのか?
幸福の画家の「妻」は幸せだったのか?
ふたりの想いが今明かされる…

本国初登場フランス映画1位(2024年1月10日公開)

監督:マルタン・プロヴォ 
出演:セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・マケーニュ
ステイシー・マーティン、アヌーク・グランベール、アンドレ・マルコン
2023年/フランス/123分/1:1.85/5.1ch/原題:BONNARD Pierre et Marthe
🄫2023 – Les Films du Kiosque – France 3 Cinéma – Umedia – Volapuk
字幕:松岡葉子
配給:オンリー・ハーツ 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

2024.9.20(金)
シネスイッチ銀座他にて
全国順次公開

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ボナールとは?

2018年には日本でも国立新美術館でオルセー美術館のコレクションを中心とした大規模な展覧会が催された「幸福の画家」ピエール・ボナール(1867-1947)。
彼は、印象派に続くナビ派の代表格で、日本美術から大きな影響を受け「日本かぶれのナビ」とも呼ばれた。近年の再評価と人気は非常に高く、20世紀の最も偉大な画家の一人という評価が揺るぎないものとなっている。
大胆な色彩と日常の些細な事象を好んで描いたことで知られるボナールだが、平面的な画面構成を試みたり、見ることのプロセスそのものを描こうとするなど、終生実験的な姿勢を貫いていた。

ピエールとマルト

本映画は、ピエールと生涯の伴侶となるマルトの1893年パリでの出会いから、第一次世界大戦をはさみ晩年までの二人の波乱に満ちた関係を軸にその歩みを描いている。
謎めいたマルトは「幸福の画家」にとって、単なるミューズをはるかに超えた存在となり、ピエールは生涯で描いた2000点に及ぶ作品の3分の1に彼女を登場させた。
二人は当時の常識からはかけ離れた破天荒な愛の関係を営むが、だからこそ充実した芸術的成果を得ることができたのかもしれない。この映画はそうした彼らの実話に基づいて作られた。

主演セシル・ドゥ・フランスと
ヴァンサン・マケーニュ
監督マルタン・プロヴォ

ピエール役は『セラヴィ!』『夜明けの祈り』などのヴァンサン・マケーニュ、そしてピエールの妻マルト役には 『ヒア アフター』『少年と自転車』『メビウス』などのセシル・ドゥ・フランス。フランス映画界を牽引する二人がピエールとマルトを演じている。
監督は、素朴派の女性画家セラフィーヌ・ルイの生涯を描いた伝記映画『セラフィーヌの庭』で、セザール賞最多7部門を受賞した名匠マルタン・プロヴォ。
マケーニュとプロヴォ監督は、2024年横浜フランス映画祭での本作上映に際し来日、本映画は映画祭唯一の賞である「観客賞」を受賞した。

COMMENTS

コメントをお寄せいただいた方々(50音順·敬称略)
今祥枝/江國香織/折田千鶴子/きさらぎ尚/久米宏/古賀太/
新藤悦子/那須慶子/橋爪勇介/はな/東紗友美/山口路子

今 祥枝

ライター/編集者

絵画のように美しい映像とは裏腹に、狂おしいほどの愛の喜びと、
業火に焼かれるほどの嫉妬と絶望、
その苦しみを伝えるピエールとマルトの物語に、どうしようもなく心惹かれた。
愛は人を身勝手にするもの。ピエールの傲慢さと残酷さは、
正当化もできなければ美化することもできない。
それでも、ただただ分かち難い魂の結びつきに
愛の深淵さを思う。

江國香織

小説家

失われた時代の輝かしい手ざわりと、
ボナールという画家の残酷なまでの誠意と無邪気。
伝説のカップルの、野蛮さと生命力が美しい。
そしてもちろん、あの黄色。

折田千鶴子

映画ライター

あまたある画家の伝記映画とも似て非なる、
色んな思いを乗り越えて“運命や天寿を全うした2人の愛”から滴り落ちたような、
どこか透明で清涼感にも似た後味にふっと酔う。
隠れ家のような田舎での暮らし、川遊びや睡蓮、訪ねるモネらとの交流など、
興味津々の名場面も目白押し!
ちょっとエキセントリックで謎めいた女性マルトも、
今だからこそ描き得たのかストンと腑に落ちる。
主演2人が、とにかく素晴らしい!

きさらぎ尚

映画評論家

画家とその妻は、こんなにも強く、悩ましい絆で結ばれていたのか。
生涯にわたる彼らの関係は、驚きと困惑に彩られている。
芸術家のエゴ、妻の虚言——。出会った瞬間から、
二人が一緒に画面に映るこの映画は、きっぱりとして濃やかな、
まるで両人の肖像画だ。どちらがどうのと答えを求める必要はあるまい。
もう一人のモデルの存在や印象派画家モネとの交流、美しい風景。
本筋の<二人の愛>に散りばめられている
これらのニュアンスまで楽しみ尽くせる。

久米宏

フリーアナウンサー

画家ピエール·ボナールが亡くなったのは 僕が3歳の時でした
そのピエールと妻マルトの人生·····
スクリーンが明るくなった時
きっとこれが真実だったのだと信じました
フランスを代表する2人の俳優はそれ程見事なのです

古賀太

日本大学芸術学部教授

この映画は2度見るといい。
1度目は画家ボナールの幸福な軌跡として、
2度目は妻マルトを始めとして、ブロンドのモデルのルネ、
若い芸術家たちを魅了し何度も富豪と結婚するミシアらの、
女たちの苦渋の物語として。
それにしても、これまで太めの情けない男を演じてきた感じの
ヴァンサン·マケーニュが、端正な顔立ちのボナールそっくりになったのには驚いた。
また20代から70代までのマルトを演じたセシル·ドゥ·フランスの
強い存在感にも圧倒された。
今後、ボナールの絵の女性が、
すべてセシルの顔に見えてきそうだ。

新藤悦子

児童文学作家

セーヌ川のほとりの田舎家、
ボナールが去ったその家で、
マルトは絵を描き始める。
描かれる女から描く女へ。
ボナールのミューズは、ミューズを越えて、
画家に近づこうとしたのか。
絵筆を持ったマルトの横顔に
目が釘付けになる。

那須慶子

イラストレーター·画家

感極る作品。
わたし自身、小学生時に美術館でピエール·ボナールの絵に出会い、
思春期に一番影響を受けた大好きな画家だ。
印象派の光の表現よりも、絵画全体の色のバランスを重視し
神秘性を唱えたナビ派の一員としても知られるが、
印象派と並んで展示されることも多かった。
ボナールは妻と2人で気に入ったル·カネで暮らし、
モネも幾度となく訪問している様子が窺い知れたり、
生涯一人の女性を愛し続け「幸福の画家」とも呼称されたが、
事実は違うことが、この映画内で明らかになる。
傷を抱え、最期は見事に孤高の画家を全うした。
胸をわし掴みされ、久しぶりに泣いた。

橋爪勇介

ウェブ版「美術手帖」編集長

互いが互いを絡めとり、
たんなる画家とミューズという関係には
収まり切らないボナールとマルト。
この映画は、複雑な愛の変遷の物語だ。

はな

モデル

深い絆で結ばれたピエールとマルトが過ごした時間が
美しい花を咲かせたように、
人生でもっとも幸せな景色は、愛が描くもの。
大好きなピエール·ボナールの作品を
より身近に感じさせてくれる映画。
秋が運ぶ風景と重ねてみたくなる、
オススメの一本です!

東紗友美

映画ソムリエ

“幸せそう”とだれかに思われなくたって良い

ふたりにしか理解できない関係が
ふたりだけにしかわからないかたちで続いていく
それでもう十分なんじゃないか

永遠に離れないという約束ではなく
はなればなれになっても
導かれるようにそのひとのもとへ戻ってくる
それを奇跡と言ってもいいと信じたい

セーヌ川のゆるやかな流れのなかで
ふたりだけの時間を熟成していく

調和の取れていた時期も苦悩と対峙する時期も
水面のきらめきがすべてをつつみこむ
まぶしくて目を細めたくなるような時間だった

画家ピエール·ボナールの
インスピレーションの源にふれられる
愛と色彩の物語

山口路子

作家

裸になって緑の木々の間を駆けまわり
水と戯れるふたりの姿が目に焼きつき、笑い声が耳に残る。
原始的な官能の悦びの共有、
ここにふたりの絶対的関係性の核があるように感じた。
そしてそんな相手である妻を飽くことなく描き続けた画家が、
しかし、決して顔をはっきり描かなかったという事実が
スパイシーな陰影となり、惹きつけられて、
まさに一枚の絵画を前にいつまでも
佇んでいるような感覚になる。

STORY

1893年、ピエールとマルトは画家とモデルとしてパリで出会う。ブルジョア出身のピエールは謎めいて型破りなマルトに強く惹かれ、二人はともに暮らし始める。田舎に家を見つけ社交的な世界から遠ざかり、クロード・モネなど限られた友人との交流を除いては半ば隠遁生活の中で絵画制作に励むピエール。マルトをモデルにした赤裸々な絵画は評判となりピエールは展覧会で大成功をおさめる。1914年第一次世界大戦が始まった夏、仕事で毎週パリに赴くピエールに不安がつのるマルト、終戦間近にはパリのアトリエでピエールのモデルになっている美術学校生ルネと出くわす。なぜかマルトはルネを気に入り3人の関係は複雑なものに…。

主演セシル・ドゥ・フランス(マルト)

1975年、ベルギーのナミュール出身。6歳で初舞台、17歳からパリで演技の勉強をする。『スパニッシュ・アパートメント』(02)で注目を浴び、続編『ロシアン・ドールズ』(05)にも出演、前者でセザール賞有望若手女優賞を、後者で助演女優賞を受賞。『ハイテンション』(03)、『モンテーニュ通りのカフェ』(06)、『シスタースマイル ドミニクの歌』(09)、『少年と自転車』(11)、『メビウス』(13)、『幻滅』(21)などの他、ジャッキー・チェン主演『80デイズ』(04)やクリント・イーストウッド監督作『ヒア アフター』(10)などアメリカ映画にも出演。

主演ヴァンサン・マケーニュ(ピエール)

1978年、パリ出身。フランス国立高等演劇学校を卒業後、俳優業に加え映画監督や舞台演出家としても活躍。2013年開催の第66回カンヌ国際映画祭で 『ソルフェリーノの戦い』『7月14日の娘』『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』3本の出演作品が上映され、2014年ミア・ハンセン=ラヴ監督の 『EDEN/エデン』 、16年『夜明けの祈り』(アンヌ・フォンテーヌ監督)、17年『最強のふたり』で知られるエリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュの監督コンビによる『セラヴィ!』に出演と、数々のヒット作を牽引。今や名実ともにフランスを代表する俳優のひとり。

CAST

セシル・ドゥ・フランス
「ヒア アフター」「少年と自転車」「メビウス」「幻滅」
ヴァンサン・マケーニュ
「EDEN/エデン」「夜明けの祈り」「セラヴィ!」
ステイシー・マーティン
「ニンフォマニアック」「グッバイ・ゴダール!」
アヌーク・グランベール
「私の男」「バッドボーイズ」
アンドレ・マルコン
「幻滅」

監督マルタン・プロヴォ

1957年、ブレスト出身。2008年、フランスに実在した素朴派の女性画家セラフィーヌ・ルイの生涯を描いた伝記映画『セラフィーヌの庭』は、セザール賞で最多7部門を受賞し、本国の興行でも成功を収めた。その後、女性として初めて性を描いた作家ヴィオレット・ルデュックと、彼女を障害支え続けたシモーヌ・ド・ボーヴォワールとの友情を描いた『ヴィオレット ある作家の肖像』(13)を製作。『ルージュの手紙』(16)では、2大女優のカトリーヌ・ドヌーヴとカトリーヌ・フロが母と娘役で初共演し、話題となった。コメディ作品『5月の花嫁学校』(20)は、主演のジュリエット・ビノシュをはじめ、フランスの名女優たちが出演した。

STAFF

監督:マルタン・プロヴォ
「5月の花嫁学校」「ルージュの手紙」「ヴィオレット ある作家の肖像」「セラフィーヌの庭」
撮影:ギョーム・シフマン
「OSS 117 私を愛したカフェオーレ」「アーティスト」
衣装:ピエール=ジャン・ラロック
「幻滅」「ベネデッタ」
美術:ジェレミー・デュシエ
「ショコラ 君がいて、僕がいる」「パリの調香師 しあわせの香りを探して」
音楽:マイケル・ガラッソ
「セラフィーヌの庭」「花様年華」

映画に登場し、ポスターでも使われているボナールの作品『昼食』(パリ市立近代美術館蔵)が来日!

TRIO パリ・東京・大阪
モダンアート・コレクション

5/21-8/25 東京国立近代美術館
9/14-12/8 大阪中之島美術館

展覧会の「女性たちのまなざし」というテーマのコーナーで展示中。この作品に描かれているマルトの目元がなぜぼやけているのかというプロヴォ監督の疑問が、本映画の構想に大きな影響を与えた。

TRAILER

THEATER

都道府県劇場名公開日
北海道・東北
北海道札幌シアターキノ9/21(土)
シネマ・トーラス10/5(土)
青森シネマディクト10/12(土)
岩手盛岡ルミエール10/25(金)
宮城フォーラム仙台11/1(金)
関東
東京シネスイッチ銀座9/20(金)
UPLINK吉祥寺9/20(金)
神奈川川崎市アートセンター10/12(土)
横浜シネマリン10/12(土)
あつぎのえいがかんkiki10/18(金)
小田原シネマ館11/15(金)
千葉キネマ旬報シアター10/26(土)
栃木小山シネマロブレ9/20(金)
宇都宮ヒカリ座11/1(金)
群馬シネマテークたかさき10/18(金)
茨城あまや座11/30(土)
中部
愛知センチュリーシネマ9/20(金)
長野上田映劇10/4(金)
塩尻東座12/14(土)
静岡静岡シネギャラリー10/18(金)
CINEMA e_ra11/15(金)
ジョイランドみしま11/22(金)
石川シネモンド10/26(土)
富山ほとり座11/9(土)
関西
大阪テアトル梅田10/4(金)
兵庫シネ・リーブル神戸10/4(金)
シネ・ピピア12/6(金)
京都京都シネマ10/4(金)
中国・四国
広島サロンシネマ11/22(金)
香川ホールソレイユ12/6(金)
九州・沖縄
長崎長崎セントラル劇場10/25(金)
福岡KBCシネマ12/6(金)
宮崎宮崎キネマ館11/22(金)
熊本Denkikan10/25(金)
大分大分シネマ510/19(土)
別府ブルーバード劇場11/1(金)
鹿児島ガーデンズシネマ10/23(水)
沖縄シネマプラザハウス10/4(金)
シネマパレット10/18(金)